仮置き場

書き殴り系備忘録。不便なので移転してきました。

マルセル・ヒルシャー

信じたくなかったけどとうとうヒルシャーが引退する。

この何年か引退する⇆しない報道が出て生きて滑ってる生ヒルシャーが本物だと見届けなくてはと

焦りと恐怖に駆られてヨーロッパ行かねばという圧が凄かった。

 

ヒルシャーの何が凄いって他の選手と比較してあり得ない速さである事、

それが見た目にも伝わる事、

どうなってこの速さが生まれるのか想像できない事。

運動選手としては身長が低いと言うディスアドバンテージが影響及ぼさないのも凄い。

と言っても近年はとにかく最短距離を直線的にという判りやすい滑り方をしていた。

自然の地形は時に直線の動きでは対応できない所もあるけど、

そこはハードエッジで弾き飛ばされないように筋力等々で反発を抑え

それをスピードに変えていたと思う。

それはヒルシャーの代名詞のようにも言われていた。

 

が、頭角を現した頃のヒルシャーは絶妙な滑らかさも持ち合わせ、

直線としなりと体重移動がシームレスに、メカニックな動きの対極に見えて

美と速さを同時に司る特別な存在だなと思っていた。

 

これは彼がエントリー種目を増やし

高速種目のトレーニングをするようになって失われたように思う。

しなやかさが消え太い筋肉の鎧が彼の滑りに影響を与えているなと感じた。

ヒルシャーが多種目にエントリーして総合優勝を狙い続ける限り、

以前の滑りは帰って来ないのだと。

天才的神業士だったヒルシャーは泥臭い努力の人へと変わりつつあった。

それでもまたいつか…に誘われ非直線的なヒルシャー復活を夢見ていたし、

現人神を目に焼き付けたいと現地での観戦を試みるようになった。

 

現地観戦。

これ今でこそ宿も見つかるし交通手段やチケットも手に入りやすくなったけど、

以前は宿のHPか都市圏を主にしたリクエスト式予約サイトしかなくて絶望的だった。

その頃は冬のヨーロッパリゾートで1〜2泊なんて単位はなかった。

良くあるバックパッカースタイル、現地に着いて宿探し…可能なのかも知れない。

でも宿がなければ凍死しかねず万単位の動員を誇るイベントで

スキー場としては小さな村で空きがそうやすやすと見つかるとも思えない。

斯くしてヒルシャースイッチが入った頃にはネットでほぼ手配ができる時代になって、

これで行けるってなった瞬間の喜び!

現地でヒルシャーに熱狂する人たちと共有する熱、

ヒルシャーを誰もが知ってる街で彼のファンだと言うと

戸惑いの代わりに大きな笑顔と親しみが返ってくる小さな幸せ。

この喜びといつか朝露の様にあっさり消えてしまう恐怖。

その二つに突き動かされ自分の中のヨーロッパ行きたい欲を凌駕する勢いで渡航を企画した。

 

が、終わりはやってきたし、

もう一度往時の柔らかな滑りを見たいという願い、

とうとうそれは叶わない夢になった。

そんな中ヒルシャーのいないマドンナ、

夜半で雪面の温度が下がりほぼ氷の斜面を滑る事になる高速ナイトレース。

ハードエッジが不利には働かないお誂え向きの場所。

 

主役中の主役不在を確かめに行く不安、どんなモチベーションで行けば良いか正直判らない。

一つ言えるのはザグレブに行って

予めヒルシャー不在を感じる日程にしなくて良かったという事。

我ながら後ろ向きなまとめだなと思うけど、笑い飛ばせる日が来る事を祈りながら。

 

 

 ↓最初のヨーロッパ観戦時のログ

↓前回のエントリ

19uni.hatenablog.com

 

https://www.instagram.com/p/B2Bc8KmDgHd/

思い出の17/18シーズンのThe night raceシュラドミング。たった1人の人間がここまでの熱狂を作れるとは…マルセル・ヒルシャー早すぎる引退だけど、お疲れ様でした。 #retire #marcelhirscher

19uni.hatenablog.com